● 第22回知的財産翻訳検定<第12回和文英訳>試験 標準解答と講評
標準解答および講評の掲載にあたって |
当然のことながら翻訳の試験では「正解」が幾通りもあり得ます。 また、採点者の好みによって評価が変わるようなことは厳に避けるべきです。このような観点から、採点は、主に、「これは誰が見てもまずい」という点についてその深刻度に応じて重み付けをした減点を行う方式で行っています。また、各ジャンルについてそれぞれ2名の採点者(氏名公表を差し控えます)が採点にあたり、両者の評価が著しく異なる場合は必要により第3者が加わって意見をすりあわせることにより、できるだけ公正な評価を行うことを心がけました。 ここに掲載する「標準解答」は作問にあたった試験委員が中心になって作成したものです。模範解答という意味ではなく、あくまでも参考用に提示するものです。また、「講評」は、実際に採点評価にあたられた採点委員の方々のご指摘をもとに作成したものです。 今回の検定試験は、このように多くの先生方のご理解とご支援のもとに実施されました。この場をお借りして御礼申し上げます。 ご意見などございましたら次回検定試験実施の際の参考とさせていただきますので、「標準解答に対する意見」という表題で検定事務局宛にemail<kentei(at)nipta.org>でお寄せください。※「(at)は通常のメールアドレスの「@」を意味しています。迷惑メール防止対策のため、このような表示をしておりますので、予めご了承ください。」 |
1級/知財法務実務
1級/電気・電子工学 1級/機械工学 1級/化 学 1級/バイオテクノロジー |
2級
第22回 知的財産翻訳検定 2級 講評 |
問1 総括:優れた回答が多かった印象ですが、英語特許クレームの基礎ルールをわきまえていないと思われる回答も目につきました。 1.1.インデントをタブではなく、空白多数で行っている例が多く見られます。スタイルに従うのが第一ですが、英語表記の基本をしっかりと習得することが常識です。 1.2.ある機能を果たす構成要件の基本表現は、「a storage battery <for> supplying the electric motor with electricity」のように、forで後置修飾する表現が多いと思います。機能を表現する方法は、以下のようにいろいろあると思いますが、その表現を使う理由を考えてケースバイケースで使い分けることが必要でしょう。 a storage battery for supplying a storage battery that supplies a storage battery configured to supply a storage battery supplying 1.3.請求項3において、構成要件があらたについ課されているのでfurther comprisingを使用しなくてはなりませんが、これを見逃した例が多く見られました。 1.4.請求項中でantecedent basisなしでtheを使用する例も見られましたが請求項中では冠詞は厳密に判断して使用しなくてはなりません。 1.5.transitionの表現では、 An electric wheelchair, comprising: のように、comprising以降は独立分詞構文ですので、同格のコンマが必要なことを理解してください。 An electric wheelchair comprising: という表現も文法上はあり得ますが、この場合はwheelchairが単純な名詞で直接後置修飾できる場合のみに使える表現です。 問2 総括:課題文の内容はよく理解されていたようですが、英訳は意外と難しかったようです。 不適切用語(技術用語・特許用語)の使用が目につきました。 2.1.用語調査が不足している例が見られました。大気atmosphereと空気airは概念が違います。水蒸気も「日常語の蒸気steam」と「技術用語の水蒸気water vapor」とは異なるものです。 2.2.多くの方ができなかったのが、日光が大気に「入射する」という表現でした。入射は単純に「入る」でenterでよいのですが、なかなか難しかったと思います。よくある回答がincidentという表現でしたが、これは形容詞で状態を示します。状態と動作は分けて考えるのが通常です。 2.3.赤外線は基本的な訳はinfrared ray(s), infrared radiationでしょうが、infraredのみの用例も多いのでこれも可としました。 2.4.「亜酸化窒素」は難しかったでしょうか。辞書をしっかり引けば正しい訳語は見つけることができたはずです。Wikipediaにさえも載っています。調査は翻訳の基本です。 2.5.「特願」が誤訳されている回答(例えば、”published patent application” など)がいくつかありました。「出願」、「公開」、「特許」などの基本的な語の概念をしっかり理解することが大切です。 問3 総括:技術的な内容が十分理解されていないための誤訳、単数複数の不整合、などが目につきました。 3.1.「パネルで構成される」は、意味を理解すれば「作られている」に過ぎません。原文が難しすぎる表現を使っていても、意味を正しく理解すべきでしょう。 3.2.意外にできなかったのが、「出し入れ」という表現ですが、これはtake in and outでも意味は通じますが、テクニカル英語は、単義語を使うべきで多義語の組み合わせは避けるのが普通です。load and unloadでしょう。ちなみに「取り込む」はtake in よりも、incorporateでしょう。 3.3.機械分野の翻訳で難しいのが、「もはやその状態になっているのか、その状態にすることができるのか」によって訳が異なる点です。 「接続されるようになっている」は「必要なときに接続できるように装置が作られている」という意味なので、be adapted to be connectedです。これをbe connectedとするともはや接続されているという意味になります。 3.4.原文にも責任がありますが、「エアパッキン」は「エアの漏れないようなパッキング」という意味で、「air-tight packing」が正しい訳です。単にair packingでは多くの例に見られるように、いわゆるプチプチと理解されかねません。Googleで「エアパッキン」「air packing」で検索すると多くの例がプチプチを示しています。正しい技術的知識が重要であるという例です。 3.5.キャスターの「旋回」については、一般的には構造上、”swivel” が適訳と思われますが、キャスターホイールの回転軸(水平)が旋回軸(鉛直)上にある場合もあるので、”rotate”, “turn” なども正解としました。 |
3級
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第22回 知的財産翻訳検定 3級 講評
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