● 第6回知的財産翻訳検定<第4回和文英訳>試験 標準解答と講評
標準解答および講評の掲載にあたって | |
当然のことながら和文英訳の試験では「正解」が幾通りもあり得ます。 また、採点者の好みによって評価が変わるようなことは厳に避けるべきです。このような観点から、採点は、主に、「これは誰が見てもまずい」という点についてその深刻度に応じて重み付けをした減点を行う方式で行っています。また、選択課題の各ジャンルについてそれぞれ2名の採点者(氏名公表を差し控えます)が採点にあたり、両者の評価が著しく異なる場合は必要により第3者が加わって意見をすりあわせることにより、できるだけ公正な評価を行うことを心がけました。 ここに掲載する「標準解答」は作問にあたった試験委員が中心になって作成したものです。模範解答という意味ではなく、あくまでも参考用に提示するものです。また、「講評」は、実際に採点評価にあたられた採点委員の方々のご指摘をもとに作成したものです。 今回の検定試験は、このように多くの先生方のご理解とご支援のもとに実施されました。この場をお借りして御礼申し上げます。 ご意見などございましたら次回検定試験実施の際の参考とさせていただきますので、「標準解答に対する意見」という表題で事務局宛にemail(office@nipta.org)でお寄せください。
| 1級/知財法務実務
1級/電気・電子工学 1級/機 械 問題(機械工学)PDF形式48KB 標準解答(機械工学)PDF形式118KB 1級/化 学 |
2級
3級
第6回NIPTA翻訳検定 2級 講評
知的財産翻訳検定に「2級」を設けたのは今回が初めてです。物品、化学、電気に素材をもとめ、特許明細書に良く出てくる表現を題材にした3問の課題文が出題されました。技術内容は、特許翻訳者であれば誰でも理解できると思われる平易なもので、英文を構成する力の程度が問われることになりました。その意味では、問題1が一番難しかったようです。
<問題1について>
最初のセンテンスの「安全具の使用が法律的に義務付けられている」については、should を用いて、「法律的に」を訳していない例、we とか you などの人称代名詞を多用した例、など改良を要すると思われる解答訳がかなりありました。また, 「同乗させる」の訳として、"accompany infants" という訳もいくつかありましたが、この表現ですと、親が幼児に同伴するというような意味になるので減点の対象としました。また、「安全具」を "safety tool" と訳した例も多くありましたが、チャイルドシートなどを"tool"と表現するのは不適切と認め減点の対象としました。
「車内に設置した場合、スペースが大き過ぎる。」の訳として、"too large to install"と訳した例がありましたが、これだと車内に設置できないことになってしまいます。
末尾の文章「これらの問題を改善するためになされた」について、"improve these disadvantages" などの訳がありましたが、本来 problems や disadvantages を improve することはできません。「改善」を、「解決」、「減殺」、「対処」などと読み替えて訳した解答は正解としてあります。
<問題2について>
化学分野の明細書では化合物の成分範囲の記述はよく目にするところです。解答訳は概ねレベルの高いものでしたが、いくつか指摘されるべき点もありました。そのひとつは質量%を、wt%、percent by weight のように、「重量%」と訳した解答が約半数にのぼったことです。地球の表面上では位置による重力の違いは無視しえるほど小さく、「質量1gは、ほぼ重量1g」になりますが、厳密にいえば「質量%」と「重量%」とは異なるものであり、mass %, percent by massの表現も確立していることから、採点委員会の考えとして、「重量%」と読める訳は減点の対象としました。また、「含有量」については、"contained amount" などの訳がありましたが、"content" という一般的に認知された表現を用いた訳が訳半数でした。また、「好ましくない」を、"unfavorable"、"unfortunate"などと訳した例も多くありましたが、"not preferred" など、の一般的な表現を用いた解答と比較して判断し減点の対象としました。さらにまた、「添加剤」を"addictive",「混合物」を"combination"とするなど、化学分野の基本的な表現が抑えられていない解答がいくつかありました。
<問題3について>
電子メール通信システムに関する発明についてのクレームは、第1の種類の電子データと第1の電子データとの関係、第2の種類の電子データと第2の電子データとの関係、が不明瞭なため、混乱があったようです。「第1の電子データ」を「第1の種類の電子データ」とみなした訳も、そうでない訳も、減点対象とはしていません。また、原文は、「…おいて」形式の表現になっていますが、訳文として、one part 形式、two part 形式、いずれも正解としてあります。構成要素として、「第1および第2の情報端末装置」と「データ中継装置」とをきちんと抜き出している解答訳においても、両者をつなぐ and が抜けていたり、先行詞がないものについて定冠詞 "the" をつけるなどの、基本的な訳ミスがかなり多くありました。また、「電子メール」を"electric mail" としたり、従属クレームの従属もとのクレーム(クレーム1)の記載が抜けているような解答訳も目に付きました。「上記第2の電子データが存在するかどうかの判定を行う」の「判定」を、judge と訳した解答がいくつかありましたが、determine とするのが良いとの判断から減点の対象としています。
第6回NIPTA翻訳検定 3級 講評
準備中につき、後日公表いたします。なお、出題問題と解答と解説は、下記リンク先でご覧いただけます。