● 第9回知的財産翻訳検定<第4回英文和訳>試験 標準解答と講評
標準解答および講評の掲載にあたって |
当然のことながら英文和訳の試験では「正解」が幾通りもあり得ます。 また、採点者の好みによって評価が変わるようなことは厳に避けるべきです。このような観点から、採点は、主に、「これは誰が見てもまずい」という点についてその深刻度に応じて重み付けをした減点を行う方式で行っています。また、各ジャンルについてそれぞれ2名の採点者(氏名公表を差し控えます)が採点にあたり、両者の評価が著しく異なる場合は必要により第3者が加わって意見をすりあわせることにより、できるだけ公正な評価を行うことを心がけました。 ここに掲載する「標準解答」は作問にあたった試験委員が中心になって作成したものです。模範解答という意味ではなく、あくまでも参考用に提示するものです。また、「講評」は、実際に採点評価にあたられた採点委員の方々のご指摘をもとに作成したものです。 今回の検定試験は、このように多くの先生方のご理解とご支援のもとに実施されました。この場をお借りして御礼申し上げます。 ご意見などございましたら次回検定試験実施の際の参考とさせていただきますので、「標準解答に対する意見」という表題で検定事務局宛にemail<kentei(at)nipta.org>でお寄せください。※「(at)は通常のメールアドレスの「@」を意味しています。迷惑メール防止対策のため、このような表示をしておりますので、予めご了承ください。」 |
1級/知財法務実務
1級/電気・電子工学 1級/機 械 問題(機械工学)PDF形式172KB 標準解答(機械工学)PDF形式88KB 1級/化 学 |
2級
3級
第9回NIPTA翻訳検定 2級 講評
●問1について
クレームの翻訳においては構成要素を的確に把握することがまず大事です。課題文においては、wherein が特殊な使われ方をされていることや comprising が3つの階層にわたって(計3回)使われていることなどから、構成要素を正しく把握することが難しかったようです。主題であるAn industrial robot の構成要素は、移行語であるcomprising の目的語がa first robot part; a second robot part movably arranged
with respect to the first robot part; and a balancing arrangement とあることからわかるように、first robot part とsecond robot part と balancing arrangement です。それに続く the balancing arrangement comprising 以下の記載は 三番目の要素であるbalancing arrangement の構成を更に細かく定義するものです。このことを正しく読み解いた解答はごく少数でした。因みに、balancing arrangement は、a housing, a first attachment and a second attachment, a telescopic unit, a first spring seat, a second spring seat, and a helical spring です。単語やフレーズレベルについても、operatively connected、pivoted、telescopic unit などの訳がうまくできていない回答が目立ちました。
operatively connectedについては「連動」を意味する「作動的に接続」などを正解とし「操作可能に接続」などは減点対象としました。pivot については、支点を中心にした回転運動を意味する言葉「枢動」、「揺動」、「回転」、「ピボット運動」などはいずれも正解としましたが、「枢着」は減点対象としました。telescopic unit は、昔の望遠鏡のような、径の異なる筒状部材を組み合わせた伸縮自在の構造を持つユニットです。これについては、「望遠鏡ユニット」とした解答が多くありましたが減点の対象としました。
●問2について
エコ技術に関しては最近の報道でも多く目にすることから、大多数の解答が概ね正しい訳となっていますが、内容がわかりやすいために意訳が過ぎた例や、細部にわたっては原文から若干乖離した例が多い印象です。例えば、最初のセンテンスThere is currently a need for hydrogen to play a greater role in the energy market ついては、本来「水素がより大きな役割を果たす」という趣旨であるところ、「より大きな役割を果たす水素が求められる」のように原文のニュアンスと微妙に異なる訳が目に付きました。increased hydrogen production will most likely be met by conventional technologies, such as natural gas reformation も、"be met"(ここでは賄うとか充足するというような意味)の意味をとらえきれず、「遭遇する」、「ぶつかる」などの誤訳が少なからずありました。Sequestration of
carbon dioxide (二酸化炭素の隔離)については、「二酸化炭素の抑制」、「炭酸ガスの除去」といった意味合いの訳が少なからずありました。辞書にあたる時間がなかったものと思われます。
●問3に関して
比較的平易な内容でしたので正答の割合は高かったのですが、proportional to
either the first electrical signal 112 or the second electrical signal 113, whichever has
a higher value. の訳が少し難しかったようです。後段のalways proportional to the current 112, 113 having a higher value. の記載から明らかなように、signal 112 と signal 113 とのうち、レベルの高いほうの信号に比例するという意味であることは明らかです。「いずれが高いにせよ」という意味の解答訳が複数ありました。whichever may have a higher value と混同されたものと思われます。
●総合
問1のクレーム訳に時間がかかり、問2、問3に十分時間を割けずに推敲をこらす余裕がなかったせいか、比較的平易と思われる問2、問3においても誤訳や不適切訳が目につきました。クレーム訳においては、まず全体を眺めて、comprising や ; and に留意して構成要素をただしく把握することで翻訳が進みます。また、従来技術の説明については、わかっている内容であっても一気に意訳せず、原文を確かめながら翻訳をすることが大事だと感じさせられました。
第9回NIPTA翻訳検定 3級 講評
【事務局からお知らせとお詫び】
2009年10月4日実施の第9回知的財産翻訳検定の3級試験において、白紙回答が複数ありました。原因を調べた結果、答案提出間際に、PC操作の加減で、一端作成された答案が白紙になってしまう状況があったことが確認されました。インターネット経由受験のシステムが、受験者の方々にとって誤操作を生じやすいものであったことが原因でございます。協会といたしましてこのことに対しお詫び申し上げるとともに、システムの再点検・改良を行い今後このようなことが生じないよう努力いたしますので引き続きご理解ご支援を賜りますようお願い申し上げます。
(検定担当理事 浜口宗武)