奥山 尚一(久遠特許事務所 代表 弁理士)

理事長 奥山 尚一
久遠特許事務所
代表 弁理士

  
 機械翻訳の時代を迎えて、日本の翻訳文化は曲がり角に来ています。大きな転換点になるような気がします。1万3千年ほど続いた縄文文化の中で育った当時の日本語が漢字と出会って、5世紀ころ作られた万葉仮名と、8〜9世紀に生まれた平仮名などが完成していった時代、明治期に活発になった言文一致運動の時代と同じくらいの影響が後世に残るのではないかと思っています。   
 ニューラル機械翻訳の進化は続いています。その中で、語学教育も大きく変わると考えられますし、これまで日本人が営々と築いてきた翻訳文化も影響を受けるでしょう。ただ、翻訳という人間がする行為の価値は変わりません。なぜかといえば、日本語文化圏の優位性はこれからも維持されていきますし、維持されていかなければならないからです。日本人は世界の文化と情報を翻訳を通じて自らのものとしてきました。そして、これからは日本の文化をより広く世界に伝えていかなければいけません。   
 当協会は2004年に設立されて以来、知的財産に関する高度な翻訳能力を有する者を育成評価していくための活動を推進してきました。今後は、このように変化している翻訳文化の流れに正面から向き合って、活動していかなければいけないと考えています。産業界そして知的財産分野の多くの皆様のご指導とご支援を得て、我が国の知的財産翻訳の水準向上に資するように鋭意取り組みを進めてまいります。   
 各界、各位の幅広いご理解とご支援を改めてお願い申し上げます。


2020年7月